図書館サービス概論レポート(2021ー2022)

設題
身近な公共図書館(都道府県立より、市町村立が望ましい)を観察し、このテキストに書いてあることと比較しつつ、その図書館の特徴を述べ、またあなたの具体的で実現可能な希望を列挙してください。

解答

1)はじめに

今回は自身の在住する埼玉県狭山市の市立図書館を観察対象とした。埼玉県狭山市は県西部に位置し、人口149,828人の市で図書館は中央館と分館の二館と一台の自動車図書館からなる。本レポートの実地観察は中央館で行った。

また、隣接する市に入間市(人口146,808人)がある。今回の近隣の同規模自治体はこの入間市を対象とした。入間市の図書館は本館と3館の分館及び配本所、1台の自動車図書館からなる。

なお本レポートの各数値は注がない限り、それぞれの市の図書館要覧、『埼玉県の公立図書館』及び『日本の図書館:統計と名簿2020』に拠るものである。また数値は市全体のものを参照した。

2)狭山市図書館の特徴

蔵書数は図書(一般書、児童書の計で)424,853冊あり、市民一人あたりの蔵書冊数は2.87冊である。入間市は3.73冊(蔵書数558,504冊)、埼玉県では3.38冊(人口7,377千人、蔵書数24,921千冊)、全国の値も3.57冊(人口127,444千人、蔵書455,450千人)でやや劣っている。

次に貸出密度(視聴覚資料含む)を見ると、狭山市3.35(貸出件数502,568)、入間市3.97(同480,765)、埼玉県5.28(同38,957千)、全国5.00(同637,626千)で、この地区(狭山、入間)の数値は低いことが分かる。

また市民一人あたりの資料購入費は狭山市182円(資料購入費27,379,352円)、入間市112円(同16,373,000円)、埼玉県189円、全国208円となり、全国の購入費よりやや劣るものの入間市と比してやや高額、県とほぼ同程度といえる。

最後に人口登録率を見ると、狭山市88.8%(登録者133,039人)、入間市37.5%(同54,993人)、埼玉県58%(同4,275千人)、全国41.8%となっており、狭山市の数値が突出している。

以上より狭山市立図書館は蔵書数が少なく、貸出密度も低調、資料購入費は隣接市と比べ高額だが県、全国平均で見ると並、人口登録率は非常に高いことが分かる。 

3)基本的なサービス

以下、狭山市立中央図書館の基本的サービスを述べる。

図書館は館の一階が書庫、二階が児童書、三階が一般書、視聴覚資料、四階に郷土資料が排架されている。一階の書庫は閉架式で他は開架式である。

資料の閲覧は火曜から日曜の10時~17時が可能である。なお水、金、土曜日は4階郷土資料室を除き20時まで開館時間を延長している。

図書は一人10冊、他の視聴覚資料は各2点ずつ15日間借りられる。また返却滞納時は新規貸出の制限がとられる。貸出は窓口の他、セルフでも行え、借りる際等に使用できる本の除菌設備の導入も行われた。複写機は各フロアに設置されている。

一般的な読書案内は2階、3階で行われ、郷土資料とそれ以外の専門性の高い読書案内やレファレンスは4階で行われている。リクエストサービスは新規購入と相互貸借いずれかの申込を兼ねている。

文化・集会活動は、映画の上映会、郷土にゆかりのあるテーマの講演会などが不定期に行われている。視聴覚サービスは、インターネット、及び各種データベースの閲覧できるパソコンが3階、4階に設置されているのみである。

4)対象別サービス

児童向けのサービスは読み聞かせ、パネルシアター等が行われており、その一部はボランティアの参画もある
また2階児童書フロアの書架でテーマ別の本の紹介が常時行われている。また学社連係で出前授業や見学の受け入れも実施されている。

ヤングアダルトサービスとしては広報紙の発行、本の紹介を行っている。高齢者向けのサービスは老眼鏡の設置、大活字本の排架が行われている。障碍者向けのサービスは館内の点字ブロック設置がある。他に点字図書、デイジー図書の貸出も行っているようだが詳細は把握できない。また多文化サービスは観察に加え、要覧も一読したが実施を把握できなかった。

5)狭山市立図書館に対しての希望

私の希望は次の2点である。

第一に広報をより盛んに行ってほしい。例えば、今回観察してみてもセルフ貸出端末、図書除菌機の設置などハード面の充実も図られているのだが、そのことが全く伝わってこない。以前、国会図書館デジタルコレクション図書館送信資料の利用開始の際も市内では広報されず、国会図書館のサイトに登録館として表示されるのみということもあった。館内に案内のポスターを貼るというところからでも実施して欲しい。PRしていくことは図書館の評価を上げる、理解を得ることにも直結するだろう。

次にサービス提供の改善を望む。現在、専門的なレファレンス、リクエストサービスは4階郷土資料室窓口でのみの対応である。これを各フロアで可能にして欲しい。職員の配置転換である程度は可能であり、また郷土資料室が閉室される夜間開館時のサービス向上にもつながる。

以上の2点の実施により図書館の評価を上げることで、その先に予算の増額などが可能になり、2)の特徴で述べた、他館と比べ劣る部分の改善が可能になるのではと考える。

文字数 2099文字

参考文献
狭山市立図書館編(2021)『図書館要覧 令和3年度』
https://www.city.sayama.saitama.jp/shisei/shisetsu/bunkashisetsu/library/plan/toshokan-yoran-index.html(2022/05/30最終閲覧)

入間市立図書館編(2021)『令和3年度 図書館要覧』
https://lib.city.iruma.saitama.jp/toshow/html/upload/yoran/2021_youran.pdf(2022/05/30最終閲覧)

埼玉図書館協会編(2021)『令和3年度 埼玉の公立図書館』
https://www.sailib.net/cyosa(2022/05/30最終閲覧)

日本図書館協会編『日本の図書館:統計と名簿』

講評

狭山市立図書館のことがよく調べられています。
ご希望が実現するよう、働きかけてみてください。
さらに他館を訪れ、相違点を考えてみてください。
総評: 合格

振り返って

先の「図書館学概論」の姉妹版とも言えるレポート。同じ時期にテキストを読み進め仕上げました。このレポートのポイントは『日本の図書館:統計と名簿』からの比較が必須であるということ。これもネットに挙がっている他の方のレポート及びそれに関する情報が役に立ちました。

レポート作成自体は、とても楽しかったです。これは図書館へのインタビューが求められるものではありませんが、資料を基にした比較で、自分の住む市の図書館の実態を把握することができる貴重な体験をすることができました。

こういうレポートを進めていく中で、日本図書館協会を始めとする図書館団体のつながりの強さ、調査、情報発信能力の高さ等を実感していきます。博物館に関する団体のそれよりもずっと強いものです。この辺は博物館業界も参考にするところがあるのではと強く感じます。

更にいえば、私の専門とする公文書の世界では、それを扱う専門職として、アーキビスト、というものが確立されつつあります。この職能団体がうまく機能しているかどうかと言えば可も無く不可も無くといったところだと感じています。

公文書館(文書館)で働く人達は大きく分けて二つの技能を備えている人に区別できると私は考えています。一つは図書館の流れを汲み司書資格を有する技能保持者、そしてもう一つは主として近世の古文書の読解能力を有する技能保持者です。アーキビストという資格の創設に伴い、この二つの技能をどうミックスさせていくのかなぁ、と古文書がほとんど読めない私は遠くから見守っている(汗)次第です。そしてこの二つの職能があることが職能団体の設立にも影響を与えるのではと思っています。まぁ、双方ともに母体となる団体はしっかりしています。それがプラスとして働くか、マイナスとなるか、どんなものなのでしょうか。

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