図書館情報資源特論レポート(2021-2022)

設題
灰色文献とはなにか、灰色文献の定義や意義、特性について記述してください。また、灰色文献と言われる具体的な資料名を挙げて、その資料の特徴についても説明してください。

解答

1.はじめに

ここではまず本講座のテキストに拠る灰色文献の定義を述べる。その上で近年の灰色文献の定義に触れ、灰色文献の特性を考察する。次に従来灰色文献とされた具体的資料とその特徴に触れ、最後に若干の考察を行う。

2.灰色文献の定義

本講座で、灰色文献の定義が挙げられているのは「図書館情報資源概論」(森2016)と「図書館情報資源特論」(伊藤2012)である。両書では灰色文献を「非市販資料や入手困難資料」(森104頁)、「少部数で配布先が限定されていたり、所在確認、入手が極めて困難な文献」(伊藤5頁)としている。その上で両書とも刊行時点での動向を踏まえ、紙資源ではどのような資料が灰色文献か区別できたが、インターネット上では出版・流通されている灰色文献の判断が困難(森104頁)であること、灰色文献がインターネットの普及・影響により印刷されずにホームページで公開されるようになった(伊藤5頁)ことに言及している。これは共に灰色文献がインターネット普及の影響を受けるという特性を示唆したものといえよう。実際はどうか、灰色文献を研究している池田貴儀の論文で確認する。

3.近年の灰色文献の定義

(池田2015)では以下の見解を示している。「今日、情報環境の変化により、多種多様な資料や情報がインターネットに公開されるようになった。しかし灰色文献という存在は今も消えていない。むしろデジタル環境の進展は灰色文献の範疇を広げ、さらなる灰色文献を産み出し続けている」(同193頁)

その上で灰色文献国際会議での灰色文献の定義とその変容を取り上げている。具体的には、ニューヨーク・ルクセンブルク定義、プラハ定義などである。さらにこれらの定義では、灰色文献が単なる資料から情報へと変容し、より多くのものが灰色文献に含まれる結果になったと指摘している(同195頁)。

ちなみに灰色文献のプラハ定義は「知的財産権により保護された紙や電子のフォーマットで、政府、大学、ビジネス、産業のあらゆるレベルにおいて産み出される多様なドキュメント形態で、図書館所蔵や機関リポジトリで収集、保存される十分な質を持つものを表す。しかし、商業出版社によってコントロールされているものではない。主たる活動が出版を本業としない組織によってコントロールされている。」というものである(同198頁)。

そして(池田2019)では「インターネットを通じて灰色文献が流通することで、灰色文献そのものの概念が変わり灰色ではなくなるという指摘が現実のものとなりつつある」と言及している(同16頁)。

4.灰色文献の特性

灰色文献の特性はまず定義で述べられた入手困難性がある。加えてインターネットの普及の影響を受けることもあろう。これは灰色文献の文章自体が一つの電子化可能な情報であったと換言できる。このインターネットとの親和性が、従来の灰色文献を閲覧可能な文献情報へと変えたと同時に、情報化の結果新たな灰色文献といえる情報を生み出したともいえる。

5.灰色文献の意義

灰色文献の意義は第一に、図書館が収集、整理、保存、公開することで学術動向の把握が可能になることであろう。そしてこれを蓄積していくことで、レファレンスツールの一つとして役立てられる。また(馬場2018 97頁)で挙げられている通り国民の「知る権利」の保障にもつながる。そして図書館にすれば、図書館法第3条に「…地方行政資料…を収集し、一般利用に供すること」とされ、灰色文献の一つである地方自治体の作成した資料が含まれていること自体が意義にもなろう。

6.灰色文献の具体例とその意義

以下項目は(伊藤5-6頁)に拠る。

1)政府刊行物
官報、白書、統計書が代表例(森102頁)。逐次刊行物が多い。発行部数が少なく、非市販資料が多い。公開基準が曖昧。増刷が殆ど無いなど。しかし近年Webで公開されているものも多い(伊藤74頁)。

2)地方自治体が作成した資料
1)政府刊行物に準ずる。

3)民間のシンクタンク、調査機関などが作成・発行したプロジェクトレポートや市場調査報告書配布が組織内に限定されることが多いため収集が困難。速報性はあるが査読制はないため内容の質に差がある(馬場95頁)。

4)学位論文
日本では独創性や先行研究、重要文献のレビューなど新しい知見が得られるもの。流通を目的としないが提出先の大学、国会図書館が所蔵しているので閲覧可能(馬場95頁)。

5)会議録
国内外の学会、大会、研修集会、シンポジウムなどで参加者のみに配布されるもの。速報性があるものもあり貴重な情報源となる(馬場95頁)。

7.まとめ

灰色文献がもつ問題性はあらゆる情報の流れが妨げられることなく、自由に平等に利用できる制度が確立していない現状(馬場97頁)があるといえる。これに対し図書館は灰色文献を収集、整理、保存、公開する役割が求められているのは、3.近年の灰色文献の定義、で見た通りである。将来、図書館に関わることを目指す身として、常に灰色文献の最新の動向を踏まえそれを利活用できるよう研鑽を積んでいきたい。

文字数 2100文字

参考文献
池田貴儀 2015. インターネット時代の灰色文献 灰色文献の定義の変容とピサ宣言を中心に. 情報管理vol58 no3:193-203
池田貴儀 2019. 灰色文献のいま~2010年代の動向を中心に. カレントアウェアネスNO.340:15-19
伊藤明 2012. 『図書館情報資源特論』.近畿大学通信教育部
馬場俊明編 2018. 『新訂版 図書館情報資源概論 JLA図書館情報学テキストシリーズⅢ』公益財団法人日本図書館協会
森美由紀 2016. 『図書館情報資源概論』.近畿大学通信教育部

講評

灰色文献の定義や特徴ついて記述できています。引用が目立ちます。自分の言葉でまとめていきましょう。
近年の灰色文献では、各資料は一部ウェブで公開されているものもあります。
どのようなデータベースで閲覧できるのか調べて具体的に記述するとさらに良くなったでしょう。
総評: 合格

振り返って

「灰色文献」。こいつが厄介物です。

近畿大学の通信のテキストには何度か出てくるものですが、どれも解説が少ない&日々の情報公開の進展によって定義が変わり続けている、という特徴があります。

私は、それを警戒して灰色文献の研究が多い池田貴儀さんの研究を中心にレポートを組み立てていきました。結果、正確さは得られたものの、独自性が薄いと評される結果となってしまいました。

この辺のバランスは難しいなと思います。私の場合はその講義のテキストを読んで、それに似たような文章を書くようにしています。この科目は、引用が多かったので、そうしたのですが、、バランスが難しい。
正直、今のご時世、ネットで調べると、その科目で「良し」とされるレポートが見つかります。でも、それで勝負するのはつまらない。自分のレポートを書くとすると、よっぽどのことが無い限り評価は厳しくはなってしまうんですよね。

資料館に勤めている人間にしても、何かを整理し書くときには、なるべく多くの資料を集めていくことが求められるます。その中にはもちろん灰色文献も含まれるわけでして。他のレポートでも述べていますが、その辺に関しての研究の蓄積は図書館学に一日の長があるのではないかと思います。
そして資料館にも、入手が困難な資料、「灰色」資料?が当然存在します。それらへのアプローチも調べていかなければな、と感じました。
また、地理学では比較的この灰色の資料に関するアプローチは述べられているかと思います。
民俗学になると…「聞き書き」に通じるのでしょうか。ここは浅学のため判りかねます。

私にできること、オリジナリティーと言えば、それら諸学問領域の「灰色」の資料に関するアプローチ方法を整理、まとめ、かつそういった資料を使っていくことなのかなと思っています。

灰色なことを評しただけに、ハッキリした文章にはなりませんでした(汗。

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