情報資源組織論レポート(2021-2022)
設題 指定したキーワードをすべて使って、各設問の解答を完成させてください。
1.現在、多くの公共図書館や大学図書館で、外部の書誌データを利用した目録作成業務が行われています。集中目録作業と分担目録作業(=共同目録作業)、それぞれの特徴(意味や役割、課題など)を明確にし、さらに今後の目録作成業務のあり方について自らの見解をまとめてください。(1,000字)
<キーワード:MARC、集中目録作業、分担目録作業、総合目録、書誌ユーティリティ>
解答
現在多くの公共図書館や大学図書館で、MARCを活用した目録の作成作業が行われている。この流れを整理すると同時に、私自身が置かれている状況下での若干の考察を加えたい。
目録、MARCの作成に際し、一つの機関ないし組織が他の図書館のために一括してその作業を行う集中目録作業がある。これは図書発行から目録の反映に多少のタイムラグが生じる。しかし、一度その目録に掲載されたなら、その情報は均一なものになり、齟齬は生じにくい。
これに比して目録の作成を複数の参加機関が協力・分担し、総合目録を作成する分担目録作業がある。ここでは、総合目録に書誌が無い場合、オリジナル目録作業が行われる。またそうした成果をコピー目録作業でおのおのが利用できる。これにより施設間での相互貸借が可能になるという利点がある。しかし一方でオリジナル目録作業を一定の水準で維持することが困難であり、時に重複レコードが生じることなどの短所もある。こうした短所の克服をはかるために総合目録データベース自体やそのシステムを管理する専門組織、書誌ユーティリティが存在する。
これらの目録作業により書誌が登録されていくが、施設間の情報共有はそこに留まらず、それに付随するものまで拡大しつつあるといえよう。例えばレファレンス共同データベースなどがある。さらにLODによるセマンティックウェブにより扱う情報は増加してきている。
そうした中、MLA連携によりモノ、図書、文書の情報共有が可能になりつつある。しかし私は博物館相当施設に勤務しているが、その趨勢は感じつつも、物足りなさも感じている。それは、おのおのの施設に特有なデータは目録化され連携が可能になっているが、各施設がそれに付随して所有するものを縦覧した目録が少ない点である。
例えば博物館なら図録を作成しているが、それらのデータを共有、活用する事例は少ない。近年、奈良文化研究所の「全国遺跡報告書総覧」のようなものがでてきていはいるが、未だ限られた領域である。
図書館の目録作成業務が、博物館、文書館に与えた影響は大きい。その成果をさらに反映させていき、モノ、図書、文書間にまたがる情報網だけではなく、それぞれの機関の図書、図書間、モノ、モノ間、文書、文書間にまたがる連携が期待される。そうして縦横に情報網を広げていく。その際、図書館における目録作成業務の展開の成果が大きな役割を果たすと私は考える。
文字数 1000文字
参考文献
日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編 2020.『図書館情報学会用語辞典 第5版』丸善出版
榎本裕希子・石井大輔・名城邦孝 2019. 『ベーシック司書講座 図書館の基礎と展望3 情報資源組織論 第2版』学文社
設題 2.地域の図書館(公共図書館)での現地調査もしくは調査対象館のHPの蔵書検索により、「蔵書の所在記号(背ラベル)の付与のしかた」について複数ケースを洗い出し、気づいたことをまとめてください。さらに、調査で得た内容や関連情報をもとに、書架分類と書誌分類という二つの点から、NDCの分類(記号)を活用することの意義や課題について考察してください。尚、調査対象館は“NDCを採用する近隣の公共図書館”で、取り扱う情報資源は“紙資料”とする。(1,000字)
<キーワード:書架分類、書誌分類、目録、配架(テキストでは排架を使用)、所在記号>
解答
今回、書架分類と書誌分類の二つからNDC記号の活用について考察すべく調査したのは、埼玉県狭山市にある市立中央図書館である。方法はHPによる蔵書検索、実地調査を合わせて行った。
HPによる蔵書検索では「夏目漱石 坊っちゃん」で検索をした。得られた書誌情報は62件、本レポートで取り上げるのは以下である。
①[B 913.6 ナ]坊っちゃん 夏目漱石 新潮文庫 なー1ー3 東京:新潮社 2012年
②[918.6 ナ 2]定本漱石全集 第2巻 夏目金之助 各巻書名 倫敦塔ほか・坊っちゃん 東京:岩波書店 2017年
③[J F ナ]坊っちゃん 夏目漱石 Kodomo books 東京:子ども書房 星雲社 1993年 資料種別 児童図書
④[J M ナ]坊っちゃん 夏目漱石 岩波少年文庫554 東京:岩波書店 資料種別 児童図書
⑤[913.6 ナ 1]坊っちゃん 1 夏目漱石 大活字文庫16 東京:大活字[東京]:デジタルパブリッシングサービス
調査対象館はNDL採用館でかつ特殊分類規定も確認された。①はNDCの前に文庫本を示す「B」が付与されている。また児童書(この分類は蔵書検索の結果表示されたもの)の所在記号は館の特殊分類規定に基づいており、実際に館で排架状況を確認しなければ、当該図書にはたどり着けない。因みに児童書の所在記号は1990年前後を境にJuniorの頭文字「J」にNDCを加えた形に変更されている。
一例として
⑥[J 369 ナ]こどものけんり「子どもの権利条約」こども語訳 名取弘文 東京:佑学社 1991
を挙げておく。また図書排架の案内図は一般書の階のみ入手でき、児童書の階には検索端末のそばに常置されているのみだった。
以上の結果より、NDCの分類記号を活用することの意義や課題を書架分類、書誌分類の観点から考察していく。
まず、総合的な目録ともいえるOPACを利用して、同一内容の図書を検索した場合、NDCを用いた所在記号は複数にまたがる。これは書誌分類を一定の程度で表記しており、ある程度の意義があるといえる。しかし反面、目録が無いと検索は困難である。それに比して書架分類が考慮された記号(この館では、児童書、文庫本)
を用いた場合は当該施設内でのみの検索は一程度容易になる。しかし、その所在記号の汎用性は低下する。
つまりNDCの分類を活用する意義・課題は、書架分類、書誌分類の反映のバランスにその双方が含まれるといえる。その一つの表われが今回の調査で得られた結果である。
文字数 1050文字
参考文献
狭山市立中央図書館
https://web.city.sayama.saitama.jp/shisei/shisetsu/bunkasisetsu/library/chuou/index.html(2022/04/10最終閲覧)
狭山市立図書館要覧
https://www.city.saitama.jp/shisei/shisetsu/bunkashisetsu/library/service/toshokan-youran-index.html(2022/04/10最終閲覧)
笹岡信 1967.図書の分類-UDC を中心に.薬学図書館12:2
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpla/12/2/12_2_35/_pdf
福永智子 2004.大学図書館における書架分類の現状と問題点. 椙山女学園大学研究論集 人文科学篇35:43-54
米谷優子・村上泰子・川瀬綾子・森美由紀・北克一 2016.『日本十進分類法新訂10版』の検討その(15)ー書誌分類と書架分類ー.情報学 Journals of Informatics.13(1):44-50
講評
どの部分をどの文献から引用したのか、明確に区別できるよう記述できているとより良いです。
総評: 合格
振り返って
今回の講座を受講するにあたって、一番最初に書いたレポートです。設題1の図書・図書間…のくだりが分かりづらかったなと思います。
ここは…
①図書館の「図書」、博物館の「モノ」、文書館の「文書」といった特徴的な資料のデータの共有化は行なわれている。
②しかし、博物館にある「図書」、文書館にある「図書」であったり、図書館にある「モノ」と他種施設にある「モノ」、文書館にある「文書」、多種施設にある「文書」の共同目録化が進められていないんじゃないか。
…という趣旨で書きました。
…博物館の資料室にある図書、文書館の閲覧室にある参考文献とかって、共同目録データベースに乗っかっているかっていうと落ちているんですよね。
そして前に述べた図録の例は、博物館同士の図録の共同目録データベースの必要性について触れたつもりでした。
これから挙げていくレポート皆に言えることですが、その時は「書けた」と思っていても、自分の文書に酔っているパターンが私の場合多かったというのが、今見返しての印象です。
あとは「参考文献」。これの扱いが難しいところで、レポートによっては文字通り参考にした文献を全部挙げる、というものもあれば、このレポートで指摘されたように「引用文献」のみ挙げよ、というものもあって…途惑いました。